【肉盛修理】シャフト・軸・軸受け部・ベアリング部の摩耗寸法復元

いつもめっき屋営業マンのブログをご覧いただきありがとうございます。

今回は軸修理に関するお話しです。



目次

  • 軸の摩耗について
  • 肉盛り修理とは
  • 肉盛り修理の例
  • 軸の耐摩耗性を上げる方法
  • まとめ


軸の摩耗について

ロールを長らく使用していると軸部がベアリングなどの付属部品と擦れて摩耗してくることがあります。
多少の摩耗であれば使用上問題ないケースもありますが、段差ができる程に摩耗してくると振れも大きくなり生産に影響が出てきます。

それだけで済めばよいですが、軸が折れる可能性がありかなり危険です。



冷却ロール軸摩耗

この写真は冷却ロールのベアリング取り付け部分が摩耗している状態ですが、元々はネジ部分と同じくらいだった寸法が摩耗によりここまで小さくなってしまっています。

このままでは使用し続けると折れる可能性もあり危険なため、お客様より修理依頼がありました。
これだけ摩耗しているとめっきでは修正ができません。

このような場合、弊社では溶接による肉盛り修正で対応させていただいております。


今回は肉盛修理についてご紹介したいと思います。


肉盛り修理とは


肉盛り修正




肉盛り修理とは摩耗した部分を溶接で肉盛りした後、切削加工をすることにより寸法復元を行う修理のことです。



溶接についてはこちらの記事をご覧ください。




溶接で肉盛りを行うため、摩耗した軸の寸法も元通りの寸法に復元が可能です。

しかしながらリスクもございます。



①溶接部に微細なピンホールが発生する可能性があります。

②軸の材質により溶接部が硬化するため、過度のニップ圧がかかると折れる可能性があります。

③軸仕上げを行う際に、胴部または他の軸部を受け加工するため傷が入る可能性があります。

④入荷時より振れが大きくなる可能性があります。

⑤表面仕上がり品の場合十分注意して加工しますが、擦り傷等のリスクがあります。


注意点!


①溶接部に微細なピンホールが発生する可能性があります。

巣穴
溶接時には空気を内包することがあるため、旋盤仕上げ後に穴となって出てくることがあります。
繰り返し溶接をし直すことで穴を限りなく減らすことは可能ですが、コストと品質に影響が出ることから微細なピンホールの発生に関してはご了承頂いております。


②軸の材質により溶接部が硬化するため、過度のニップ圧がかかると折れる可能性があります。

軸折れ
軸の材質によっては溶接箇所付近が硬化することがございます。過度にニップをかける使用法だと軸に負担がかかり、折れてしまう可能性があります。


③軸仕上げを行う際に、胴部または他の軸部を受け加工するため傷が入る可能性があります。

溶接により、溶接より外側が熱ひずみで振れてセンター穴基準での加工が出来なくなります。溶接した部分より内側を受けて加工する必要があるため、胴部または軸部に加工時の受け傷が入る可能性がございます。

旋盤受け写真

上記のように受けで胴部または軸部を受けるため、受け傷が入ります。


④入荷時より振れが大きくなる可能性があります。

振れ
溶接した部分には熱が加わるため、熱ひずみにより振れが発生する可能性があります。



⑤表面仕上がり品の場合十分注意して加工しますが、擦り傷等のリスクがあります。

運搬時及び加工時には十分配慮して加工を行いますが、場合によっては梱包を外しての修正となるため、擦り傷等の発生リスクがございます。

肉盛り修理の例

φ600冷却ロールの軸修理の例です。


①修理前、軸部分がかなり傷んでいます。

溶接前 

②溶接時の様子
溶接のスパッタの付着を防ぐため溶接箇所以外はマスキングを行っております。
※スパッタとは溶接時に飛び散った火花が金属粒として付着したもののことを言います。

溶接時マスキング 

③旋盤にて切削加工をします。
精度が厳しいものは取り代を残して研磨にて仕上げますが、今回は旋盤で仕上げます。
胴部から芯をひろうため、胴部の端50㎜程を受けて加工します。

溶接後旋盤仕上げ時 

④旋盤加工後
旋盤加工により溶接した部分が元通りに復元されました。

肉盛り修正後


肉盛り修正は以上で完了となります。

軸の耐摩耗性を上げる方法


今回は肉盛り修正によって寸法復元は出来ましたが、摩耗により再び軸が傷んでしまう可能性がございます。
そのため、弊社ではロール新作時あるいは軸肉盛り修理時に硬質クロムめっきを合わせて施工することを推奨しております。

①耐摩耗性の向上

硬質クロムめっきによる軸部への効果②耐食性の向上

①耐摩耗性の向上

クロムめっきは非常に硬く、数値に表すとHV800~950程度(一般的な鉄鋼材であるSS材は120~140HV程度)となっており、下記のグラフから見てのその硬さは一目瞭然です。


タイトルなし


この硬さに加え、摩擦係数が低いことから、耐摩耗性に優れていると言われています。

②耐食性の向上

クロムめっき表面は酸素に触れることで不動態膜が形成されているので高耐食性を示します。
硬質クロムめっき処理した部品やロールを使用しているとめっきに傷が入ることがありますが、以下の機構で不動態膜の再形成が起こり、少しの傷であれば高耐食性を維持した状態で使用することができます。

耐食性

以上の2点の効果により、軸の寿命が延びることが期待できます。


まとめ


①軸部が摩耗により小径になりめっきでは復元が難しくなった場合、溶接による肉盛り修正で寸法復元が可能です。
②溶接肉盛りはリスクが伴います。
③摩耗対策にはクロムめっきの施工がおすすめです。




以上になります。

ご覧頂きありがとうございました。
軸修理をご希望される場合はお気軽にお問い合わせ下さい。



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