研磨代残しってどんな加工?

研削加工品を取り扱っているとたびたび研磨代残しあるいは取り代をつけるといった言葉を聞くことがあいます。

皆さんは研磨代(けんましろ)と言われて何かピンと来ますか?

私は初めて聞いた時、研磨する代金のことかなぁと思いました。
今回はそんな研磨代についての話です。


目次

  • 研磨代とは
  • 切削と研削(研磨)の違い
  • 研磨(研削)をするメリット
  • 研磨代を残す時の注意点





研磨代とは

研磨代

研磨(研削)代とは旋盤加工仕上げの際に後工程の研削(研磨)をするために削る分の寸法を大きめにして仕上げることを指します。
取り代を残すともいいます。

径にして+0.2~0.4ほど仕上げ径に対して大きくします。


仕上げ径φ75h7の場合、φ75.2~φ75.4に旋盤加工で大きめに仕上げます
研磨代
       

つまり、研削(研磨)では0.2~0.4を削って寸法内に収めることになります。

※研磨代についてはJISでも規定がありますが、各会社の次工程での加工のしやすさに応じて研磨代を設定するべきです。



ただし、高周波焼入れや材質により研磨代が変わる場合もあるので注意が必要です。



切削と研削(研磨)の違い

なぜ、切削後に研削(研磨)が必要になるか知っていますか?
それは切削と研削との間に違いがあるためです。


切削加工

旋盤

刃物を持った工具を使用して品物を切るように削り取っていく加工。

⇒削り取る能力が高く、形状を作るのに適している。


研削加工

研削

研削砥石を使用して品物を研ぐように削り取っていく加工。

⇒削り取る能力が研削に比べて劣る代わりに、表面を滑らかにしたり、精度良く仕上げるのに適している。




つまり、切削加工⇒研削加工をおこなうことでより品質の高い製品に仕上がります。

もう少し研削(研磨)をするメリットを詳しく説明します。




研削(研磨)をするメリット

✓公差管理や精度といった品質が向上する

研削時は研削液を使用して常に製品を冷やしながら加工をするため、温度管理がしやすく寸法管理が切削に比べて用意です。
トラバース研削

また切削は刃物台が動くのに対して、研削は
製品を載せているテーブルを左右に往復させることで加工をおこなうトラバース研削という加工方法になります。
砥石が一定の切り込み位置に固定した状態で製品が往復することで研削が進んでいきます。その結果、製品が砥石にならって加工され、精度が出やすくなります。
研削のメリット

そしてセンター穴を使って両軸を同時に研削することが可能なため、軸と胴体の同芯もより高精度になります


✓表面がより細やかに仕上げることができる

砥石による研削は磨きに近づくので表面の仕上がり状態も切削に比べてより細やかに仕上がります。
弊社の円筒研削盤ではクロムめっき後であればRy1.0以下でも対応が可能です。

※ただし、砥石によるスクラッチがNGの場合はさらにバフもしくはバーチカル研磨が必要です。





これらのメリットのある研削加工をするために研磨代(けんましろ)が重要です。



研磨代を残す時の注意点

研磨代を残す際に注意すべき点があります。
削り代を残すことからそのまま仕上げるよりも加工が楽になる反面、
取り扱いを丁寧にしなければ次工程での不良に繋がるので注意が必要です。



✓少なくても多くてもだめ

取り代は多くても少なくてもダメ
研磨代が少ないと研削が一部当たり切らなくなったり、多すぎると寸法内に入れるのに時間がかかりすぎてしまう可能性があります。
そのため、研磨代も適切な量になるようにきっちり管理することが大事です。


✓削るからといってもだこんはNG

だこん傷①

旋盤後に研削するから多少の傷は大丈夫と安易に捉えてはいけません。
表面の傷が深いと研磨代よりも削らないと傷が除去しきれなくなる場合があります。
せっかく、削るために研磨代を付けているのにそれ以上に削らないといけないとなると本末転倒ですよね。




✓振れは最小限に抑えること

あたり切らない

振れが大きすぎるとこれもまた研磨代内で円筒研削が当たり切らない可能性が出てきます。
それだけでなく、あまりにも振れが大きいと旋盤仕上がり時から外筒厚みの偏肉に変化が起きるのでアンバランス量に影響が出てしまうリスクもあります。




以上が研磨代を付ける際の注意点です。



研磨代を適切に加工することは品質の良いロールづくりに役立ちます。



研削は高精度なロールを製造するために必要不可欠な加工です。
しかし、高精度を出す秘訣はノウハウだけでなく、ロールの構造といった構想段階から検討する必要があります。




貴社で扱っているロールは高品質なものになっていますか?
旋盤加工のみで仕上げていませんか?




研削加工を取り入れることはコストアップに繋がりますが、もし現状の品質に困っているのであれば研削加工を取り入れて下さい。
そしてその際は正しく、研磨代を付けて研削加工をしましょう


まれにあるケースですが、お客さんから支給いただいた旋盤加工後のロールに研磨代がついていない場合があります。
公差が広ければ問題にはならないのですが、軸部など公差のある場所に研磨代がなければ、研磨が全くできません。
軸がすでに旋盤で仕上がってしまっていると外径だけ研磨するしかないのですが、胴体と軸を同時に研磨した時に比べると精度は出にくいです。
旋盤加工と表面処理を分けて手配されるのであれば特に気を付けていただきたいポイントです。



また研磨代を残す際には研磨逃げも重要な加工です。
こちらの記事も合わせてご覧ください。



弊社はクロムめっきとロールのトータルサプライヤーです。


クロムめっきやロールに関する技術的な質問やお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。



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