以前のブログ記事でバランスの修正方法に関してお伝えしましたが、今回は動バランスの許容値(許容アンバランス質量)の求め方について解説させていただきます。
そもそもロールってなに?って方はこちらからご覧下さい。
工業用ロールの製造方法について【旋盤仕上げまで】
- アンバランスの発生原因
- 質量mの求め方
- 偏芯の求め方
- 釣合い良さについて
- まとめ
アンバランスの発生原因
はじめに不釣合い(アンバランス)は、回転体の重心が回転中心からずれることにより生じます。
これを修正するためには、反対側に質量mのウェイトを取り付ける必要があります。ロータの質量をM、修正半径をRとすると、以下の関係が成立します。
これが動バランスの許容値(許容アンバランス質量)を計算する上での前提式になります。
バランスが悪くて転がってしまう場合にウエイトを取り付けて転がらないようにするのも同じ原理です。
質量mの求め方
動バランスの許容値計算においてはこの釣合いを成り立たせるために取り付ける質量m(g)が求めるべき値となります。
つまり、動バランス許容値は
m=M(質量)×e(偏芯)÷R(半径)
にて求めることができます。
しかしながら動バランス修正は2面取りのため、求めるmは2で割ってあげる必要があります。そのため実際には求める値は
m=M×e÷(R×2)-式①
となります。
※ただし、修正面長部が中心を起点として左右対称となっていることが条件となります。違う場合は異なるためJIS B 0905に準拠して計算する必要があります。
しかしながらまだ偏芯の値がわかりませんので計算してあげる必要があります。
偏芯の求め方
偏芯さえ求めることができれば動バランスの許容値を求めることができます。
JIS B 0905では釣合い良さを使って偏芯(比不釣り合い)との関係を定義付けています。
※JISに記載
つまり、
偏芯(比不釣り合い)e=つりあい良さ×9.55/n-式②
となります。
釣合い良さについて
釣合い良さって何?と思われた方もおられるかもしれませんが
釣合い良さとはG2.5やG6.3といった等級で表される機械においてロータ(回転体 + 回転軸)の質量分布がどれだけ均等であるかを表す量のことです。
JIS B 0905では、「剛性ロータの釣合い良さを表す量であって、比不釣合いと、ある指定された角速度との積」と定義されています。
釣合い良さは各種回転機械に応じて推奨される等級が定まっています。
そのため設計を行う場合は、各種回転機械に関して推奨される釣合い良さ等級から推奨される等級を設定する必要があります。
図面から動バランスを求める場合は、釣合い良さの等級が記載されているか確認が必要です。
参考
JISB 0905
釣合い良さの等級
各種回転機械に関して推奨される釣合い良さ等級
まとめ
偏芯の計算式を求めることができたので①の式に②を代入します。
※M(㎏)×e=m(g)×Rは重量とアンバランス質量で単位が異なるため、重量の単位を合わせてあげる必要があります。よってgに単位を合わせて9.55×1000=9550としています。
結果
動バランスの許容値計算方法
動バランスの許容値計算には①釣合い良さの等級②重量③回転数④ロール半径が分かれば、上記の式に代入することで求めることができます。
いかがだったでしょうか?
計算式を入れたエクセルデータを作ったのでよかったら活用してみて下さい。
動バランス許容値計算式
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この記事を書いた人
IWATA
めっき屋営業マン
オテック株式会社営業部所属。
オテック株式会社は
硬質クロムめっきとロールのトータルサプライヤーです。
めっきとロールに詳しい営業が日々情報発信します!!!!
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